私が衝撃を受けた、林玉子先生のコラムの第1号を皆様にご紹介したいと思いました。
「人生の黄金期、老後に備えて」という題名でした。

”のっけから年齢を白状してしまおう。
私は、現在、六十五歳。障害者手帳を持つ体で、仕事と二人の子育てを両立させ、人一倍の元気印を自認してきたが、六十歳の坂を越してから、自分でもはっきりと体力の衰えを自覚することが多くなった。

長年、老後の生活環境を研究してきた私にして、目からウロコの思いを噛み締めることも少なくない。
だが、老後、恐れるに足らずである。
むろん、それには条件がある。
「備えあれば憂いなし」、備えさえしっかりしてあれば、老後は人生で、最も優雅で心楽しい時期になる。

老後は、仕事や子育てに追われることもなく、自由な時間に、たっぷり恵まれ、好きなことを好きなようにして過ごせる、人生の黄金期なのだ。
反面、老後には三つの見えない敵が待ち受けている。
「病気・貧乏・孤独」である。

この三つを、はねのけることができる家を、老後の暮らしにふさわしい(快適なシニア住宅)だと考えている。
つまり、健康に、安全に、心豊かに過ごせる家。
人がたくさん訪れてくれ、寂しさを感じさせない家である。

幼い頃小児麻痺に架かり、足に障害が残った私だが、そう不自由を感じることなく、今も東奔西走の日々を送っている。

それを可能にしてくれるのは、一本のつえの存在だ。
年を取り、仮に足腰がおぼつかなくなっても、つえを突けば足元は、ずいぶんしっかりし、それまでと同じように行動できる。
老後の住まい、快適シニア住宅は、いわば、このつえのようなものだとも言える。
心身機能の衰えを受け止め、支えてくれる快適シニア住宅には、幾つかの押さえどころがある。
それを順次、お話してしていくことにするが、結論から先に言ってしまえば、それらの押さえどころは、老人にだけ快適な訳ではない。
快適シニア住宅は、子供から若者、中年層まで、全ての人とって安心で安全な住宅になり、だれにとっても住みやすく、心地よい住まいとなる。
老人への配慮は、全ての人への優しい配慮に通じるのだ。”

林玉子さん
1934年、台湾生まれ。東京大学大学院建築学専門課程修了。
工学博士。国際医療福祉大学教授。