介護保険制度はちょうど2000年に施工されました。

これから高齢化社会に向かおうとする時で、その後、急激に高齢化が進み、現在では4人に一人が65歳以上という超高齢化社会になっています。

2000年当時、私は50代前半でしたが、私達夫婦には、子供が娘二人なので、ゆくゆくは夫婦二人の生活になるな、と漠然に考えていました。

ですから、夫婦二人だけで、なるべく娘たちには世話を掛けたくない、ということが私達夫婦の共通の思いでした。ですので、この介護保険制度には興味がありました。

その介護保険制度の中に、住宅改修制度というものがありました。家の中の床の段差をなくしたり、立ち居するのに不自由なところへ手すりを付けたりして、なるべく家の中を安全に動けるようにする、という補助的な工事です。

その住宅改修工事を3年間で、350軒ほどやりました。

一軒一軒、高齢者の家を廻り、ご本人とお話をして、どこが不自由か聞き取りをして、改修をしてきました。

今まで、新しい家ばかりを作ってきた私ですが、そのようなことをやり出して、今までやってきた工事が、いかに高齢者にとって不自由なことが多かったか、ということが徐々に分かってきました。

それらのことをしていた時期に、日経新聞に「新・いたわりの住まい」という題名で、25回にわたりコラムが掲載されました。これを書かれたのは、国際医療福祉大学の林玉子先生でした。台湾出身のこの方は、子供の頃に小児麻痺を患って、足がご不自由だったそうです。経歴としては、建築と福祉がご専門の方です。

この先生のお話では、「老後恐れるに足らず、備えあれば憂いなし、備えさえしっかりしていれば、老後は人生の黄金期である」しかし、反面、老後には三つの目に見えない敵が待ち受けている。「病気・貧乏・孤独」である、これを先人たちは「福・禄・寿」と言って、戒めていました。

というような事柄を、住まいの工夫と考え方を建築的に分かり易く伝えていたのです。

私にとっては、目からウロコ!でした。それまでの、住まいは恰好が良くなくっちゃ、ということに水を浴びせられました。

これから私の住まいに対する思いが変わりました。